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縄文時代の土器つくり 解説版 

                     ひいらぎちゃん



ようこそ、縄文時代(じょうもんじだい)土器(どき)つくりの部屋(へや)へ!


 この土器をみて! 4500年も(まえ)に、野塩の空堀川のちかくにくらしていた縄文人(じょうもんじん)がつくった土器だよ。

 こうした土器は
粘土(ねんど)()いてつくられているけど、大きな文房具屋(ぶんぼうぐや)さんへいくと紙粘土(かみねんど)やブロンズ粘土など、そのまま乾燥(かんそう)すればかたくなる粘土があるので、みなさんもそうした粘土で土器をつくってみませんか。
 粘土は2㎏ ぐらいあれば、
(こな)ミルクのカンくらいの はばで、もう少し(たか)さのある土器がつくれるよ!

 さて、つくりはじめる
(まえ)大切(たいせつ)なことがあります。左の土器の(かたち)文様(もんよう)をよくかんさつして、目をつぶっ ても、だいたいの形や文様が(おも)()せるようになってからつくりはじめてください。また自分(じぶん)(かんが)えて形をつくろうとする人は、いちど紙に()いてみるのもよいですね。

 ここでは縄文時代中期(じょうもんじだいちゅうき)代表(だいひょう)する、東日本(ひがしにほん)日本海側(にほんかいがわ)分布(ぶんぷ)する馬高式(うまたかしき)という土器の複製品(ふくせいひん)(下の写真(しゃしん))をつくります。

1.底のつくり方 




 土器の底には、上の写真のように()(もの)や、()()のあとがついているものがあります。縄文人は底の粘土が(だい)につかないよう、大きな木の葉や編み物をあてて土器をつくっていたようです。

 まず(そこ)粘土板(ねんどいた)をつくっていきます。
 みなさんの()をにぎったくらいの大きさの粘土をとり、丸めてきれいな玉をつくります。
 それを、テーブルの上でゆっくり()しながらまるい板のようにのばしていきます。このとき、一方(いっぽう)からだけでなく、ときおり(うら)がえして押さえていきます。
 ふざけて、(ちから)まかせにやると、デコボコになって(あな)があくこともあるので、ていねいに押していきます。
 だんだんまるい板になってきましたね。(あつ)さは親指(おやゆび)(あつ)さぐらい、大きさは粉ミルクのカンの底ぐらいになったら底が完成(かんせい)です。大きければ粘土へらなどでていねいに()り、へりを指でなでて、ひび()れなどないようにします。

 底になるところは、いったん()いておきますが、テーブルにくっつかないように新聞紙(しんぶんし)などを切って裏へ()てておくと()いでしょう。
2.胴体のつくり方 


 土器片(どきへん)()(くち)注意深(ちゅういぶか)くかんさつすると、土器をつくるときの粘土の()(あげ)げ方のわかるものがあります。
 まっすぐ上へのばそうとしたり、内側へすぼめて作るときには、上に重ねる粘土帯(ねんどおび)を下の粘土帯の内側へつけ、また形を上に外へ開くときには下の粘土帯の外側へつけて積み上げています。
 
 
 つぎに(べつ)な粘土を多めにとり、手で何度(なんど)(かる)くにぎりながら(ふと)いひものようにしていきます。太さは親指(おやゆび)人差(ひとさ)し指の先を付けてOKのサインをつくったときの(えん)ぐらいの大きさです。テーブルの上で粘土を(ころ)がしながらつくるとよいでしょう。ただ、(おな)じ太さになるように気をつけてください。
 粘土の ひも ができたら、テーブルの上で一方から(かる)()しつけ、親指の はば くらいの厚さの(おび)にします。

 できたらそれを(しず)かに()ち上げて、さっきつくった底のふちへ(まわ)していきます。
 できたら、こんどは粘土の()わせ目をていねいに指でナデて密着(みっちゃく)させていきます。。外側(そとがわ)ばかりでなく、内側(うちがわ)もしっかりつけてください。しっかりつけないと、乾燥(かんそう)したあとで底がぬけますよ!
 さてつぎも粘土を多めにとって、さっきと同じ方法(ほうほう)で帯をつくります。それができたら帯を(かさ)ねていきますが、その重ねかたに縄文人の くふう があります。ここで左の写真をみてね!




 ということで、粘土には水気(みずけ)があるから、どうしても外側(そとがわ)(ひろ)がって くずれようとする力がはたらきます。ですから、まっすぐつくろうとしても(ひら)いてくるので、内側に重ね合わせた方がよいのです。こうしたことをしないで、いきなりげようとすると粘土の(おも)みで外側へいっきにくずれこむので注意(ちゅうい)してください。
 そのくりかえしで、右の写真のように(どう)までの形をつくっていきますが、粘土のナデつけは、外側では下の(だん)の粘土が出ているので、それを上へナデつけ、また内側では上の段の粘土が出ているので、こんどは(ぎゃく)に下へナデつけて密着(みっちゃく)させていきます。
 あるていど同じ厚さになったら、ヘラの()をあてて大きく上下へナデつけ、表面(ひょうめん)をたいらにしていきます。ていねいに しあげないと、あとからつける文様がうまくつけられませんよ!

   そこから(くち)部分(ぶぶん)をつくっていきますが、ここではもっとも(むずか)しい そろばん玉のような形をつくってみることにします。
 まず大切なのは、いままでつくった胴体(どうたい)があるていど かたくなっているか(たし)かめてくださいね。ここからは外側へ広げるので、粘土がやわらかいと(おも)みで くずれます。もしやわらかければ、しばらくそのままにしてください。そのとき注意(ちゅうい)するのは、粘土の水けは下へおりてくるので、一番先に(かわ)き出すのが最後(さいご)()んだ粘土帯(ねんどおび)の上のへりですから、そこにぬらしたティッシュなどをおき、かわくのをおくらせてください。ここが (かわ)いてしまうと、つぎに(かさ)ねる粘土がつきにくくなりますよ!
 さてそろばん玉のような口の形をつくるには、下の部分(ぶぶん)粘土帯(ねんどおび)外側(そとがわ)(かさ)ねて()()げ、上の部分では下の帯の外側へ重ね積んでいきます。注意するのは、最初(さいしょ)から(つよ)()げようとせず、また外側へ大きくはり出さないようにして(かさ)()えること。そうしてから、粘土帯の重ね合わせを内側からゆっくりとていねいにナデながら外へ()しながら形を(ひら)かせます。
 いちど小さめにつくってから粘土帯をのばしていくと、形がくずれにくくなります。
 形ができたら、またヘラの()をあてて大きく上下へナデつけ、表面(ひょうめん)をたいらにしていきます。
 
3.口かざりのつくり方  
 



 口に大きなかざりをつけるときには、そろばん玉の部分の粘土が生乾(なまがわ)きになり、形がくずれなくなるまで()ちますが、かざりをつけるところの粘土の表面が(かわ)いてしまうので、ぬれたティッシュなどおいてね!
 かざりは、写真のように粘土を板のようにして()ったり、またひも状にした粘土を貼ってつくります。その貼り合わせの部分には、小さなきざみを入れ、そこに水滴(すいてき)を落とし、つける粘土どうしの表面(ひょうめん)だけをドロドロにしてつけると乾いてもはがれなくなります。
 そのあと、板状の粘土を(けず)ったり、ナデつけたりしてかざりの形をととのえていきます。
 
4.文様のつけ方 
 

 左の土器の文様は、ヘラで線引(せんび)きしたり、ヘラの(さき)でくりかえし()いた文様をつけていますが、一番上の野塩から発見された左側の土器には、(なわ)をころがしてつけた縄目(なわめ)文様(もんよう)(縄文)がみられます。
 この縄目の文様については最後で説明(せつめい)しますが、こうした文様つけには注意することがあります。それは、文様をつけるときの粘土の状態です。
 土器の表面(ひょうめん)は、ヘラの()でていねいにナデつけてたいらにしていますが、文様をつけるのに一番良いのは粘土が生乾(なまがわ)きのときです。
 粘土の表面がベトベトだと、ヘラで()(せん)がめくれたり、(なわ)の目に粘土がからみつき、線や縄目の文様がうまくつけられません!  
 線で文様を引くときには、いちどに(ふか)くけずろうとせずに、(ちから)をいれずに(あさ)()き、その線をなんどもなぞるようにし、しだいに力を入れて(いきおい)いよく()いていくときれいな線がえがけますよ!

 紙粘土(かみねんど)やブロンズ粘土は、文様(もんよう)をつけ()えたらそのまま一日おけばかたくなり、できあがり。あとから紙粘土なら水彩絵(すいさいえ)()、ブロンズ粘土ならアクリル絵の具で色をつけることもできますよ!

 本物(ほんもの)の土器は、じゅうぶんに乾燥(かんそう)したあとに()かなければならないので、つぎに野焼(のや)きようすをみていくことにします。
5.野焼き 





 
  縄文時代の土器は、「野焼き」という方法で焼かれています。
 この「野焼き」は野外(やがい)地面(じめん)(くぼ)みを()り、その中に土器をならべて焼く方法(ほうほう)です。
 地面には水気(みずけ)がありますから、土器を焼く前に、窪みのなかでたき火をしておきます。このことで窪みのなかは乾燥(かんそう)し、熾火(おきび)がのこり温度(おんど)均一(きんいつ)になります。
 水気は「野焼き」の大敵(たいてき)で、土器を焼いているときに水気が土器にふれれば土器は()れてしまいます。また、生木(なまき)燃料(ねんりょう)につかうとジュクジュクと水が出てきて、それが土器にふれると表面が割れてはがれることもあります。
 そうしたことで、窪みの空焚(からだ)きや燃料(ねんりょう)選別(せんべつ)大切(たいせつ)です。なかでも窪みの空焚きは、周囲に土器をおいて余熱にさらすことで、本格的に焼きはじめるときの急激に上がる熱に()えられるようにすることができます。

 こうして本格的な土器の野焼きにはいります。
 まず、空焚きしたあとの熾火(おきび)のうえに土器をならべ、しばらくは木を燃やさずに熾火で土器を熱にならしていきます。
 そのあと、土器のまわりから均等(きんとう)(ほのお)()こるように木を()やしながらゆっくりと火力(かりょく)をあげていきます。
 土器は800℃を()えると、()けた(てつ)のように透明感(とうめいかん)のある赤色に変化(へんか)してきます。これを「煤跳(すすはね)」といって、炭化物(たんかぶつ)がすべて燃焼(ねんしょう)する高温(こうおん)状態(じょうたい)にはいり、粘土が変質(へんしつ)して土器という焼き物になったことをしめしています。
 こうした状態から急激(きゅうげき)温度(おんど)を下げると、一気に土器が収縮して「()()れ」という状態を()()こして割れてしまいます。そこで、800℃以上の温度でじゅうぶんに焼いたあと、火力をじょじょに下げ、(ほのお)がおさまったころに熾火(おきび)で土器を(つつ)み、ゆっくりと温度を下げていきます。
 温度が500℃以下(いか)になってくると、(けむり)や熾火にくすぶる炭化物(たんかぶつ)が土器に吸着(きゅうちゃく)しはじめ、その酸化炎(さんかえん)還元炎(かんげんえん)微妙(びみょう)(ちが)いにより、縄文土器特有(とくゆう)のむらのある焼け色が生成(せいせい)してきます。
 これで、できあがり。土器を焼くにはその間、一昼夜(いっちゅうや)ほどかかります。
 
 


縄目の文様
右ころがし 
        

 ひもの より方を()えたり、(ぼう)()きつけたりすることでいろいろな文様ができます。
 (ほそ)(たけ)(くだ)縦割(たてわ)りにした一本の道具(どうぐ)でも、()(かた)でいろいろな文様(もんよう)ができるので、実験(じっけん)してみてください。
 縄文人は、みなさんの()っているミサンガの意味(いみ)のように、より合わせてできるひもに神聖(しんせい)な意味を(かん)じとり、自分(じぶん)たちを(まも)ってくれるものとして(かんが)えていたのかもしれません。だからひもからできる文様にも神様(かみさま)(あらわ)れを感じていたのかも…
 じつは、ホームページのなかにある本の題名(だいめい)の「()()された聖文(せいもん)」は発掘調査(はっくつちょうさ)出土(しゅつど)した縄文人が土器にのこした神聖な文様という意味でつけられたそうです。土器には、そうした縄の文様がたくさんつけられているからです。
 いろいろなひもをつくり、粘土にころかして実験してみてくださいね!   では、さ・よ・お・な・ら…
 
   

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